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2018.02.08

歯周病と糖尿病の関係について

こんにちは。歯科衛生士の田中です。
インフルエンザが大流行しています!この時期の体調管理は特に気を付けたいですね。今回は歯周病と糖尿病の関係についてお話したいと思います。

糖尿病を患う方は歯周病になりやすいことが研究によりわかってきました。一方で、歯周病になると血糖コントロールが悪くなることもいわれています。
日頃のケアを行い口の中の健康にも気を付けることが重要です!

①口の中をチェックしましょう

口の健康は、毎日の食事や会話にもつながるとても身近なものです。みなさんは以下のようなお口のトラブルを自覚することはあるでしょうか、

  • 歯を磨くと出血する
  • 朝起きたとき歯肉に違和感がある
  • 口臭を指摘された
  • 歯肉が下がって歯が長くなったように見える
  • 体調が悪いと歯肉が腫れる
  • 歯が揺れている

歯周病には、炎症が歯肉に限局した「歯肉炎」と、歯を支えている歯槽骨が破壊されてしまう「歯周炎」があります。
上の症状が複数当てはまると「歯周炎」の可能性が高く、歯科医院での治療が必要となります。

歯周病は糖尿病と相互に悪い影響を及ぼします。
糖尿病の方は歯周病が悪化しやすく、歯周病があると糖尿病の血糖コントロールが難しくなることがわかっています。
そして、最近の研究では歯周病の治療をきちんと行うと血糖値が改善するということもわかっています。

②歯周病はプラークが原因

では、歯周病とはどんな病気でしょう?
歯周病は、成人が歯を失う最も多い原因です。日本の40歳以上では半数以上に認められ、患者の割合は年齢と共に増加します。

歯周病の原因は歯の表面に付着しているプラーク、いわゆる磨き残した歯垢です。プラークは歯の表面に最近が被膜を形成しバリアとなっており、「バイオフィルム」とも呼ばれます。(排水溝やお風呂のぬめりと同様です)
このバイオフィルムは薬物の浸透を防ぐため、水や洗口液ですすぐだけでは除去できません。
しかし、歯磨きで簡単に取り除けるため、日々の歯磨きが最も重要となるのです。

③歯周病で顎の骨(歯槽骨)が溶ける

プラークは主に細菌で構成されていて、その中には歯周病原菌も含まれます。
歯周病の原因となる細菌は歯と歯の隙間「歯周ポケット」で増殖することで、歯肉に炎症を起こし、さらに歯を支えている骨を溶かしてしまいます。
歯周ポケットが深くなるほど歯を支える骨が失われ、最後は支えきれず抜かざるを得ない状態になってしまうのです。

④歯周病治療とは何をするのか?

治療に際して、歯周病は口の中全体で同時に進行していくため、全ての歯周ポケットの深さを測る検査や、プラークの付き具合を検査します。
治療ではまず、ブラッシング指導により患者さん自身でプラークを取り除けるように練習を行います。
プラークを形成する細菌が歯肉の炎症を引き起こしているため、それを減らすのが目的で「プラークコントロール」と呼ばれ、歯周病治療の中心となります。
患者さん自身によるプラークコントロールが基本となりますが、その上で歯科医院で定期的に受診を行い、歯周ポケットの中に付着しているプラークや歯石を超音波振動機器や手用器具を用いて取り除きます。これは「スケーリング」といい、歯科医療従事者が行う重要なプラークコントロールです。
一旦治療が終了しても、歯周病は再発することが多いため、「メインテナンス」もしくは「サポーティブセラピー」と呼ばれる定期的なチェックとケアを行っていくことが必要です。

⑤糖尿病とどう関係があるのか?

なぜ、歯肉の炎症である歯周病が糖尿病に関わってくるのでしょうか。
出血や膿を出しているような歯周ポケットからは、炎症に関連した化学物質が血管を経由して体中に放出されています。
中等度以上の歯周ポケットが口の中全体にある場合、そのポケット表面積の合計は掌(てのひら)と同じ程度と考えられています。
歯周ポケットの中身は外からはなかなか見えませんが、手のひらサイズの出血や膿が治療なしで放置されていると考えると、からだ全体からも無視できない問題であることが理解できると思います。
ポケットから出て血流にのった炎症関連の化学物質は、体のなかで血糖値を下げるインスリンを効きにくくします(インスリン抵抗性)。
そのため、糖尿病が発症・進行しやすくなります。

⑥歯周病治療で血糖値が下がる!

最近では歯周病と糖尿病は密接に関連していると言われており、歯周病の治療をすると血糖コントロールが改善するという研究成果も数多く報告されています。
ここでの歯周病治療とは患者さん自身のブラッシングによるプラークコントロールをしっかり行い、歯科医院で炎症の原因となっている歯石を確実に取り除く(スケーリング)ことです。
そうすることで歯肉の炎症をコントロールできればインスリン抵抗性が改善し、血糖コントロールも改善するということが、日本での研究を含めた多くの臨床研究で報告されています。
一方で、全ての症例で血糖値の低下が生じないことも明らかになっており、どのような糖尿病患者さんで血糖値が下がりやすいのかを調査した今後の研究成果が待たれています。

⑦かかりつけ歯科医院を作りましょう

歯を失わないということは、生活の質を直接低下させないだけでなく、生活習慣病や認知症などの予防や管理にも深く影響してきていることが明らかになってきています。
歯周病コントロールのためには、歯科医院での予防的なケアや専門的なアドバイスを受けるのが有効です。
定期的なブラッシング指導を受け、自己流の間違ったブラッシングを続けないことにもつながります。
かかりつけの歯科医院をつくり、年に1、2回のチェックとクリーニングを行うことが、歯周病と糖尿病の管理という観点からだけでなく、将来の快適な生活にもつながるでしょう。

⑧治療が必要になったら

口の中のトラブルがあれば、すぐに歯科医院を受診しましょう。 治療が必要な病変は早めに発見して早めに治療することが、重症化させないために重要なポイントです。 一方で、受診した結果、治療が必要になることもあります。その際にもし血糖コントロールが悪かったら、治療効果が出にくかったり、治療をすぐに行えなかったりする場合もあります。治療を進めてよいか、歯科医だけでは判断できない場合には、糖尿病の主治医に確認をする場合もあります。 まずは、ご自身が糖尿病をお持ちであること、薬の治療を行なっていることなどを歯科医に伝えてください。 また、歯科治療後、治療に伴う痛みなどで食事がとれないこともあるでしょう。 糖尿病の薬の治療を行っている方で食事がとれない場合には、薬の調整が必要になることもあります。薬の調整方法を相談するためにも、歯科治療を予定しているときには糖尿病の主治医に伝えるようにしましょう。 歯周病は糖尿病だけでなく、脳や心臓など全身に関係します。このくらい大丈夫…と、見過ごさずに今一度自身の健康と向き合ってみましょう!

市川市行徳(福栄) 予防を中心に小児から入れ歯まで
「いつでも頼れる街の歯医者さん」を目指す個室診療
はぎわら歯科クリニック 副院長 萩原 和典